森見登美彦著書、熱帯を読む。

森見登美彦著書、熱帯を読む。

森見登美彦先生と言えば、昨年2018年に映画化された「ペンギンハイウェイ」や2016年に直木賞候補となった「夜行」や2007年に山本周五郎賞を受賞した「夜は短し歩けよ乙女」など、数々の名作を書き続ける有名な小説家さんですが、switchはそのような「名作」よりも森見先生の「迷作」が大好きであります。

 

そんな迷作の代表としては、デビュー作の「太陽の塔」「【新釈】走れメロス」「四畳半神話大系」「恋文の技術」などがそれに当てはまるかと・・。

 

共通するのが阿呆学生が主人公となっている小説なのですが、それがめちゃめちゃ面白くてニヤニヤ笑ってしまいながら読めてしまうような本が多いです。

「大日本沈殿党」「閨房調査団」なんて造語(聖なる怠け者の冒険)を読み解くにあたり、改めて森見先生っていったいどんな学生生活を営んでいたんだ・・と勝手に想像しながらクスクスと笑ってしまいます。

造語の他に文章の方でも、「私はこだわりの男である。こだわり過ぎて前に進めないということが往々にしてある」(太陽の塔)なんてめちゃめちゃカッコいい名言のですが、それを言うのが阿呆学生の逃げの口実(迷言)であったりと、冗談と本気が絶妙に入り混じって笑いを誘う作風がswitchは好きです。

 

 

森見先生の作品とは、基本的にはどの作品も真面目の中に絶妙な面白さが含まれ、愛されずにはいられない登場人物が登場するのが森見先生の作風でしょうか。

とにかく若い女性をよく観察していらっしゃることは間違いありません。

 

さて、今回読了した「熱帯」は森見先生がデビューして15周年となる小説です。

森見先生の本なので、絶対に面白いということだけは確実に分かっておりますが、「名作」なのか「迷作」なのかによって笑い要素のボリュームが全く異なってくるのです。(僕としては迷作希望です)

購入した当時はまだ新刊コーナーに積まれていたので、熱帯という本がどんな内容の本なのか事前情報はなかったのですが、今回の帯には森見先生からこんな文章が込められております⇓。

「我ながら呆れるような怪作である」

もう!・・もうそれだけで面白い!もう笑ってしまった(笑)。

はい決まり!絶対に面白い!

という言葉だけで昨年の11月に即買い!読了は大変遅くなってしまい、今(2019年2月現在)に至ります。

そんなswitchですが、「熱帯」の面白さについて語ってみたいと思います。

その前に、森見登美彦先生について書きます。

 

 

森見登美彦先生とは

◆ 生年月日

1979年1月6日生まれ

◆ 出身

奈良県生駒市

◆ 小説家としての歩み(受賞歴)

2003年、京都大学農学部在学中に執筆した「太陽の塔」で第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞して小説家デビューを果たす。

2006年、「夜は短し歩けよ乙女」で山本周五郎賞と本屋大賞2位などを受賞。

2010年、「ペンギン・ハイウェイ」で日本SF大賞を受賞。

2014年、「聖なる怠け者の冒険」で京都本大賞を受賞。

2017年、「夜行」で広島本大賞を受賞。

しばらくの間は、国立国会図書館職員として勤務しながらも兼業作家として執筆を続けながらも、現在は退職して専業作家になっています。

◆ その他

森見先生の作品は、ドラマや映画にはなっていませんが、四畳半神話大系有頂天家族がアニメ化されたり、夜は短し歩けよ乙女ペンギンハイウェイが劇場アニメ化されたりしています。

あと、夜は短し歩けよ乙女の装画や四畳半神話大系(アニメ)のキャラデザインなんかをイラストレーターの中村佑介さんが担当されていたりしています。

 

読了感想

 

今までの森見作品とは異なり、長編の部類に入ると思います。その数、なんと523ページ!

しかも序盤は森見先生本人が登場します。

そこの部分だけは、阿呆モードで書かれておりました。

帯の紹介文を引用しますが、

沈黙読書会で見かけた「熱帯」は、なんとも奇妙な本だった!

神出鬼没の古本屋台「暴夜書房」、鍵を握る飴色のカードボックスと、「部屋の中の部屋」・・。

京都の片隅で始まった冒険は京都を駆け抜け、満州の夜を潜り、数多の語り手の魂を乗り継いで、いざ謎の源流へ――!

 

と、帯に書いているとおり本の中で迷子になるような流れに逆らえないような奇妙な感覚を味わいます。

物語全体としては、前半が「熱帯」という謎の本を追い求める話。後半はそんな「熱帯」の中身を我々読者が読みすすめながら、「熱帯」という謎の本を追跡する物語です。

とにかく、謎に謎が包まれた熱帯という本をめぐる物語です。

 

我々読者は「熱帯」という本の中の「熱帯」という本を読むことになります。

その世界だけでも引き込まれます。

そこには、それぞれの「熱帯」について一つ一つの物語があるわけで、それこそが千一夜物語(仮)でもあるわけで、読了後もまだ「熱帯」が続いているような感覚に襲われました。

おそらく、森見先生の創造の魔術によるものかと・・。

 

読了して思ったことなのですが、森見先生は、「熱帯」という物語を執筆するにいたり、千一夜物語という数多の物語が綴られた作品群を通して、本(物語)の魅力や書き手の苦悩(凄さ)を書きたかったのではないでしょうか?無風帯や想像の魔術に関する考え方や捉え方が筆者の葛藤に思えてしかたありませんでした。

 

 

続いて、心に響いた文章です。

そもそも人間は解釈というレンズを通して世界を見る。

この言葉はとても深いと思いました。これが森見先生から生まれた言葉なので、どうしても深いのか浅いのか分かりかねますが、解釈のない世界というものを見てみたいものです。

世界の終わりとは世界の始まりでもある。

これもまた、カッコいい言葉です。いつか僕が行き詰まったときにはこの言葉を思い出してみようと思い、書き留めてみました。

 

 

最後に

 

どうやら「熱帯」は今回の直木三十五賞を逃したようで・・。

今回の候補に選ばれた件で、森見先生のご友人の万城目学先生はこんなことを言ったそうです。

「我々は登山ルートを間違えている。どう考えても」

二人とも、直木賞を逃した経験を合わせると通算8度目のチャレンジだそうで、直木賞を登山に揶揄して会話をしているようです。

さらに、

「この登山ルートでも、登れることを証明してくれ

とも言われたそうで、落選の連絡が来たときには「この登山ルートではやはり登れません」と無念の知らせを受け取った万城目先生は、「お天道様はみている」と言ってほくそ笑んで慰められたそうです。

ということは、森見先生はこれからも同じ作風で直木賞マウンテンを登るということでしょう。

 

落選してしまいましたが、めちゃくちゃ面白かったです。

次回作も楽しみに待っております。

 

 

「熱帯」はまだ続いている

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