又吉直樹「人間」を読む。

又吉直樹「人間」を読む。

又吉というお笑い芸人が芸人として異質だということはテレビで知っていたし、ガチの読書家だということも知っていたし、このお笑い芸人が面白いということはその当時から認めていたから、「火花」という小説が芥川賞を受賞して文学として日本中に認知された時、すっごぃ興味が湧いたのだけれど、それと同じくらいのすっごぃ嫉妬のせいで、当時ダブル受賞した羽田さんの作品「スクラップ・アンド・ビルド」は読んだけれども「火花」を読むことはなかった。

そして数年後、たまたま「火花」がブックオフで100円になっていて、自分の中で価格と嫉妬の均衡がとれたことで、手にとって読んでみた・・その結果としては、序盤の段階で両手を上げての敗北を認め、嫉妬から尊敬に切り替わり、綾部さんと同じく又吉先生と呼ぶようになったのであります。

今回は、そんな又吉先生が「人間」という長編小説を発表したので、その面白さについて紹介しようと思います。

 

又吉直樹 (またよし・なおき)

1980年大阪府寝屋川市生まれ。吉本興業所属の芸人。お笑いコンビ「ピース」として活動中。

2015年に本格的な小説デビュー作『火花』で第153回芥川賞を受賞。

2017年には二作目となる小説『劇場』を発表。2018年9月より翌年5月にかけ、

初の新聞小説となる『人間』を毎日新聞夕刊で連載。

他の著書に『第2図書係補佐』『東京百景』などがある。

 

小説「人間」はどんなストーリーなの?

 

小説「人間」は、3つの構成に分けられていて、1章では主人公永山の青春時代回顧篇となっており、38歳になる永山が今でも引きずっているナカノタイチとの確執や現在でもトラウマとなっている出来事、青春なる物語が書かれております。

2篇では、そんな青春時代の成れの果てである現在の物語と「凡人Aの懲役長すぎるやろ」の影島の一言で始まった”脱皮”に至るまでの物語となっていて、3篇では主人公の父が育った沖縄という舞台で家族という人間模様が書かれ、それぞれの章の元素が構築されて「人間」という作品に仕上がっております。

ざっくりと「人間」という物語を紹介するとするならば、青春時代の影響を良くも悪くも引きずっている主人公(38歳)がその時代と対峙し、自分の殻を破いていく物語です。

・・と、ざっくりと紹介してはみたものの、純文学なので人それぞれに解釈があると思われます。

 

小説「人間」のここが凄い!

 

又吉先生が小説に登場している!

お笑い芸人が芥川賞をとった。という設定でそのまま影島という名前で又吉先生が登場しています。温厚な又吉先生と違って攻撃性のあるキャラですが・・、なんとなくですが影島を通じて又吉先生が当時、言いたかったことをそのまま言葉としてぶつけている気がします。「火花」のとき、物凄い賛美も物凄い批判もあったことは知っていましたが、それほど又吉先生が批判に向き合い、そこから何かを得るために試みようとした傷跡が分かります。

 

自分の自尊心にとことん向き合ってる

青春時代の永山の才能があるかもしれないという思いから、才能がないという自覚に変わった後の自尊心の葛藤が読んでいられないほどの熱量で書かれています。

自分の思いどおりにならないことが人生にあると受け容れることは怠慢なのだろうか。

恋愛とか夢なんてほとんどそうだろう。

疑問なのは、そこまでの情熱や気概があるなら、なぜそこにいるのか。なぜマイクを取りにいかないのか。その半身で刺しにいく態度に心を動かされることはない

お手軽に力を持とうとすることも怠慢なのではないか。

僕達の罪の意識は自分が凡人であることによるのではないかとおもったが、

その言葉を口にする気持ちにはなれなかった。

 

又吉先生の得意なエリアというか、すごく言語化が上手なので染みます・・。

 

これは誰の物語なの?

主人公永山の脱皮小説かと思いきや、これは又吉先生が味わった批判との戦いを小説として具現化させたものなのではないか?そう思わせるほどの熱量がところどころ散見されます。

まずは影島VSナカノタイチ。圧倒的な言葉の圧で主観的に書いています。

次に影島のスキャンダルのシーン。きっと又吉先生の思いが込められています。

凡人Aと脱皮のシーンに沖縄篇・・。

表上では「人間」として形作っていますが、俺はこうやって人間をやっているんだ。という意志があるように思えました。

 

まとめ

 

さすが純文学・・。うまく書けない・・というか、全然「人間」の面白いところを書けない・・(笑)なのに、なぜそんな記事をあげるのかという自問自答をしてしまうのですが、深く考えてみると、お前ごときが書けるか・・というところまで辿りついてしまうので、そうなるとこの記事自体が破綻してしまうのでそういう気持ちは打ち消す訳ですが、「人間」って小説は紹介に値する本だよ。ということを言いたいだけなのです。

 

しかし、この小説「人間」はこれまでの作品も相当な自問自答のある作品でしたが、今まで以上に深く潜り込んでいる気がしました。又吉先生、本当に大丈夫?的な心配をするほど、批判に対しての言葉がいつもの冷静ではない狂気にも似た何かを感じ取りました。それだけ、又吉先生が批判から逃げず、受け止めた後に吸収しようとしたからこそ生まれた気持ちだと思うのですが、38歳という年齢は太宰治が心中死を遂げた年齢でもあるので・・ただただ、次回作も期待して待つのみです・・。